役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<200> 取締役就任時の慰労金特約

 弁護士 小林 公明

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取締役が,その就任の際に,会社との間で退任時の慰労金について特約を締結しておくことは,どのような意味があるか。

1 結論

特約の内容によっては,慰労金が,当該取締役の正当な理由のない解任によって,会社がその者に賠償すべき損害と認められる可能性が高まる。

2 正当な理由のない解任と会社の責任

会社は,株主総会の普通決議(累積投票により選任された取締役の解任の場合は特別決議,309Ⅱ⑦)により,いつでも取締役を解任することができる(339Ⅰ)。

たとえ任期中(最長10年,332Ⅱ)であっても,任期満了を待つ必要はなく解任できる。

したがって,解任派は解任と併せて自派の者を取締役に選任することにより,スピーディーに取締役及び取締役会の多数派を形成できる。

この解任には理由を要しない。

理由の有無を問わず,前述の手続を踏めば有効となる。

しかし,任期中に「正当な理由」なく解任された取締役は,会社に対し解任によって生じた損害の賠償を請求することができる(339Ⅱ)。

この「損害賠償責任は,取締役を正当な事由なく解任したことについて故意,過失を必要としない株式会社に課せられた法定の責任であって,その損害の範囲は,...