Q&Aコーナー 気になる論点(219) IASBの概念フレームワークの改正(8)

‐のれんと偶発負債‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)が2018年3月29日に改正した「財務報告に関する概念フレームワーク」(2018年概念フレームワーク)では,のれんは資産の定義を満たしているとしているのでしょうか。また,偶発負債は,負債の定義を満たしているとしているのでしょうか。

2018年概念フレームワークでは,のれんは資産の定義を満たしているとしていると考えられますが,特定の資産に言及することは適切ではないため,言及していません。また,偶発負債は,負債の定義を満たしているものもあれば,満たしていないものもあるとしていますが,その用語を使用していないとしています。

<解説>

2018年概念フレームワークにおける資産・負債の定義

2018年概念フレームワークでは,これまでの資産・負債の定義は,基準設定における多くの問題の解決に有益でしたが,以下の理由により,実務上混乱が生じていたとしています(BC4.3項)。

(1) 資産・負債の定義において,経済的便益の流入・流出を明示していたことにより,経済的資源・義務とそれにより生じる経済的便益の流入・流出との区別が曖昧になっていた。

(2) 一部の人々は,資産・負債の定...