ハーフタイム 「終わった人」と「終わらない人」を分けるもの

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映画「終わった人」を観た。専務取締役として子会社出向中に,簡単に仕切られた事務所の一角で時計を見ながらサラリーマン人生を終える主人公。見送る部下が掛けてくれた言葉"これからゆっくりお休みください"のあとには,生前葬のイメージ・シーンが続く。毎日が日曜日になった最初の数日は,公園・図書館・ジムなどどこへ行っても目にするのはヒマを持て余す高齢者の群れ。こうした風景は本来物悲しいはずだが,テンポ良くコミカルに展開するため周囲から笑い声すら聞えた。気持ちを立て直したあとの主人公は,故郷の同窓生との交流を通じて久しぶりに若返った気分になるが,再就職の失敗から卒婚に至るまで,失意に落ち込む日々が続き,最後は単身で故郷に移住し,NPO活動を手伝う。

映画を観終わったあとには,卒婚後の妻が主人公を訪問するラストシーンを除けば,後味の悪い印象が残った。それは主人公の深くモノを考えないで猪突猛進する姿をからかうだけで,内面の葛藤を描く場面が少ないからだった。仕事一筋だったころの華麗な人生は少々描いているが,子会社出向から定年までの12年間には,心の葛藤や今後の長い人生に向けた不安もあったはずだが,そのことは...