Q&Aコーナー 気になる論点(220) 負債と資本の区分(1)

‐現物の金融商品の分類‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)が2018年6月28日に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」(FICE DP)では,現物の金融商品について負債と資本の区分に関する要件を提案しています(コメント期限:2019年1月7日)。これは,IASBが2018年3月29日に改正した「財務報告に関する概念フレームワーク」(2018年概念フレームワーク)と整合しているのでしょうか。

FICE DPでは,IAS第32号「金融商品:表示」と同様に,現物(非デリバティブ)の金融商品について,企業自身の持分金融商品により決済される金融商品を負債に分類することを否定していません。企業が発行する持分金融商品は,その企業の経済的資源ではなく,また,2018年概念フレームワークでは,これまで同様,負債であるためには,経済的資源を移転する現在の義務を要件としているため,その要件とFICE DPが金融負債とする要件とは相違する可能性があります。

<解説>

経緯

IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)との共同の資本の特徴を有する金融商品(FICE:Financial Instrument...