世界の会計事務所から 第20回 ニュージーランド 世界の果てでのグループガバナンス

KPMGオークランド事務所 ディレクター 月峯聡子

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1.マーケットと規制緩和

日本では,ニュージーランドに対して隣国のオーストラリアとひとまとめにした,漠然としたイメージしか持っていない人が多い。英連邦に所属する英語圏で先進国といった共通点はあるが,マーケットから見れば2つの国が置かれている立場は大きく異なる。

ニュージーランドは主に南北の2島から成り,国土面積は日本の7割で,総人口はたったの470万人,人間より羊や牛の方がはるかに多く,国内の産業は自然を活かした畜産・酪農・林業・農業・水産業の第1次産業,そして観光業が大きく占める。比べてオーストラリアは国土面積が日本の20倍もあり総人口が2,400万人で,豊かな鉱山資源に恵まれている。国力には格段の差がある。

ニュージーランドはマーケットモデルとしては,欧州のフィンランドに似ているというとイメージがつかみやすいだろうか。

ニュージーランド経済は,1970年代にイギリスのEC加盟やオイルショックの影響をうけて大きく困窮した。1980年代に労働党のロンギ首相とダグラス財務大臣によるロジャーノミクスと呼ばれる,国営企業の民営化,規制撤廃,税制改革,競争原理の導入,行政部門の役割の見直し等の経済改革...