Q&Aコーナー 気になる論点(222) 負債と資本の区分(3)

‐OCIとリサイクリング‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)が2018年6月に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」(FICE DP)では,一定の金融商品を公正価値で測定した差額を,その他の包括利益(OCI)とすることを提案していますが,それをリサイクリングすることとしているのでしょうか。

FICE DPでは,企業の利用可能な経済的資源から独立した金額の義務がない金融負債などについて,公正価値で測定した差額をOCIとし,それは将来において異なることはなく,将来の業績評価には関連しないため,リサイクリングしないことを提案しています。

<解説>

金融負債の公正価値測定差額の表示(1)‐問題の所在

FICE DPでは,財務諸表利用者が企業への資源提供に関する意思決定につながる[図表1]の2つの評価(assessment)を識別し,それに関連する2つの請求権の特徴のいずれかを有している場合には,資本ではなく負債とすることを提案しています(2.17項,2.50項)。

[図表1]財務情報の評価と請求権の特徴

財務情報の評価関連する請求権の特徴資金調達の流動性及びキャッシュフローの評価清算時以外の特定...