「監査報告書の透明化」に関する監査証明府令等の改正について

金融庁企画市場局企業開示課 課長補佐 神保勇一郎
金融庁企画市場局企業開示課 係長 伊神 智江

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Ⅰ.はじめに

2018年(平成30年)11月30日に「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成30年内閣府令第54号)が公布・施行された。

これは,2018年(平成30年)7月5日付で企業会計審議会から公表された「監査基準の改訂に関する意見書」を踏まえ,以下の内閣府令等について,所要の改正を行ったものである。

財務諸表等の監査証明に関する内閣府令 (以下,「監査証明府令」という)

企業内容等の開示に関する内閣府令 (以下,「開示府令」という)

「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について (以下「ガイドライン」という)

本稿は,これら改正内閣府令等の主な内容について解説を行うものであるが,意見にわたる部分については,筆者らの私見であることをあらかじめ申し添えておく。

Ⅱ.改正の経緯・概要

会計監査は財務諸表の信頼性を担保するための重要なインフラであるが,近年,大手上場企業や上場後間もない企業における不正会計事案などを契機として会計監査の信頼性が改めて問われている状況にある。こうした背景の下,金融庁では,「会計監...