Q&Aコーナー 気になる論点(231) 気候関連の財務情報開示(2)

‐開示媒体‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 2017年6月に公表された「最終報告書(Final Report):気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言(recommendations)」(以下「TCFD提言」という)では,気候変動がもたらすリスクや機会の財務的影響を,年次財務報告で開示することを推奨しています。わが国の場合には,有価証券報告書に記載することになるのでしょうか。

TCFD提言では,推奨される開示内容を,自らの一般的な年次財務報告において記載することを提言していますが,国内の開示要件より優先されるものと考えられるべきではなく,企業が自国の開示要件に則って,財務情報開示を行うことが重要であるとしています。わが国では,会社法に基づく事業報告及び計算書類(事業報告等)や金融商品取引法に基づく有価証券報告書以外にも,様々な開示媒体があるため,企業は,これらをうまく組み合わせながら投資家等に対して効果的な情報発信を行うことが重要であると考えられているようです。

<解説>

TCFD提言(1)‐情報開示の概要

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