ハーフタイム 混迷するBrexit~EU離脱派の不満と欺瞞~

解説

  

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東西を分断していたベルリンの壁が崩壊してから30年,東西冷戦に勝利したはずの西側では自由主義と民主主義にほころびが見え始めている。所得格差を拡大する資本主義に失望した人,経済のグローバル化(工場の移転や移民の流入)によって仕事を奪われた人もポピュリズムに走っている。米国のトランプ現象も英国のBrexit騒ぎもそうしたポピュリズムの表れだと言う意見もある。英国のジョンソン首相がトランプ大統領に寄り添う姿勢を見るとそう思い勝ちだが,そのような大雑把な見方では,混迷するBrexitの背景や原因を正確に知ることは難しい。これから良識ある英国はどこへ向かうのか,英国が抜けたあとのEUはどうなるのかを予測することはさらに難しい。EU離脱期限であった10月末までの一ヵ月を英国で過ごした筆者にとっても,依然として不可解なことが多い。

Brexitの背景は,結論を先に言えば,大英帝国の歴史によって形成された誇り高い国民性に遡らなければ見えてこない。英国のEC(EUの前身)加盟は1972年に,反対してきた仏ドゴール大統領の死後,ようやく実現した。ところが,1972~75年に筆者がロンドンに在...