時事談論 vol.35「そんな監査人なら変えちゃえば?」

解説
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●「戦友」への恩義

昨年の定時株主総会で会計監査人を変えた。2003年の上場以来15年間,上場前から数えれば20年近くお世話になった。

わが社は,バブル崩壊後の日本にインターネットを使った新しいインフラを構築し,既存のビジネスの「当たり前」や「既得権」を無意味にするようなことをしよう,として作った会社だった。前任の監査人は我々のそんな“見果てぬ夢”を共有してくれた。はじめはロクな報酬も払えず,ストック・オプションで,と申し出ても「成功報酬はもらえない」と言って断られ,「報酬はいいから,しっかり内部統制を…」と言われた。「とにかく,上場しましょう。それですべて報われる。」とも。

主幹事証券会社の後出しじゃんけんのような上場に向けた「あれやこれや」にも,一緒に立ち向かってくれた。「内部統制と言っても,人手が足りない」と言えば,監査法人を辞めてくすぶっていた今のCFOを紹介してくれた。彼らがいなければ上場などとてもできなかった。「戦友」と言うにふさわしい人たちだった。

●「誰に」監査してもらうのか?

そんな恩がある監査人をなぜ変えたのか?“恩を仇で返す”みたいなことをするなんて,と思わ...