IFRSをめぐる動向 第119回 共通支配下の企業結合

解説

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 池亀 寛

  

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)及びIFRS解釈指針委員会(IFRS IC)での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,共通支配下の企業結合に関する議論の状況を紹介します。

本稿では2019年10月末までのIASBにおける議論の内容が含まれていますが,IASBの討議の状況によっては,今後,この内容が変更される可能性がありますのでご留意ください。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.「共通支配下の企業結合」プロジェクトの背景

IFRS第3号「企業結合」(以下「IFRS第3号」という。)では取得法(acquisition method)を適用して会計処理を行います。取得法では,取得企業は被取得企業の識別可能資産・負債を公正価値で測定します。ただし,共通支配下の企業結合についてはIFRS第3号の適用範囲から除外されています。ここで,共通支配下の企業結合とは,「すべての結合当事企業又は事業が最終的に企業結合の前後で同...