新春特別寄稿 上場制度を巡る2019年の回顧と2020年の展望

解説

株式会社東京証券取引所 上場部長 林 謙太郎

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1.はじめに

平成から令和へと時代の移り変わりが意識された2019年は,株式会社日本取引所グループにとって,戦後の経済復興を支えることを目的に市場が再開されて70年の節目を迎えるとともに,これまで以上に我が国経済の持続的発展を支える経済インフラとしての役割を発揮するため,「Total smart exchange~誰もがあらゆる商品を安心かつ容易に取引できる取引所~」を目指した新たな歩みを始める年となった。

現物市場の運営者である株式会社東京証券取引所(以下,「東証」という。)に対しては,今後も,上場有価証券の円滑かつ公正な流通市場の提供を通じて,多数の投資者の多様な資産運用ニーズと,上場会社の機動的な資金調達ニーズとを適切かつ効率的に結びつけること,すなわち市場機能を的確に発揮していくことが強く求められると考えられる。

適切な市場機能の発揮を通じて,我が国経済にとって喫緊の課題であるベンチャー企業の育成と上場会社の中長期的な企業価値の向上を促していくことが,令和の時代において東証が果たすべき最重要の役割となるだろう。

本稿では,20...