【投資家が求める開示】企業分析の視点からみたIFRS財務諸表 第5回 財務諸表はAIに読まれるのか?

解説

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

~AIに正しく読まれるための財務諸表の在り方~
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筆者らは,投資家等情報利用者を中心に自主的に集まり,IFRSや財務諸表の課題について議論するワークショップを年3~4回開催している。このワークショップは,特定の資格や特定の業種に属するメンバーだけの集まりではないという点と,会計基準ではなくむしろ開示の問題を議論するという点が特徴となっている。

最近はAIが財務諸表の利用者にとっても無視できない存在になっている。例えばCFA協会 は,昨年5月ロンドンで開催された年次大会で,AI やビックデータに関するセッションを8つも設定していた。資産運用の現場では,既に運用にも,分析にも,そしてデータ収集にもAIが導入されてきているからだ。そこで,こんな時代に財務諸表に求められるものは何か…ということを議論しようとし,2019年7月にワークショップを開催した。ところが議論は思わぬ方向に行き,また意外な論点を共有することになった。今回はその議論について紹介したいと思う。

1.未来予想?

今回のワークショップ開催のきっかけは,2017年までIASBでエグ...