早稲田大学大学院　会計研究科教授　秋葉　賢一

Ｑ 　国際会計基準審議会（IASB）は，IAS第１号「財務諸表の表示」を置き換えるように，2019年12月17日に公開草案（ED）「全般的な表示及び開示」（IAS第１号改正案）を公表しています（コメント期限：2020年６月30日）。IAS第１号改正案では，条件を満たす場合には経営者業績指標（MPM）を注記し，段階的な利益などとの調整に加え，各調整項目に対する法人税等と非支配株主持分の影響も開示することを提案しています。これは，なぜでしょうか。

Ａ

IAS第１号改正案では，その理由の１つとして，それらにより，財務諸表利用者は，自らの調整後１株当たり利益を計算できることを挙げています。

＜解説＞

経営者業績指標（1）‐背景

IAS第１号改正案では，2015年アジェンダ協議や2017年３月公表のディスカッションペーパー「開示に関する取組み‐開示原則」に対するフィードバックにおいて，以下が示されていたとしています（BC146項） ^① 。

（1）多くの企業は，財務諸表利用者とのコミュニケーションにおいて，経営者が定義した業績指標を...