<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第5回 会計基準の役割(その2)

解説

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

( 22頁)

財務情報の有用性

前稿( No.3446 )で正義の味方を標榜する会計基準の指針として,「情報の有用性」の話をした。では,IASBはどのような情報を有用な情報であると定義しているのであろうか。

IFRSの財務報告に関する概念フレームワークの第二章はまるまる有用な財務情報とは何かについて論じられている。その要約は第2.4項に簡潔にまとめられている。「財務情報が有用であろうとするならば,それは目的適合性がなければならず,かつ,表現しようとしている対象を忠実に表現しなければならない。財務情報の有用性は,それが比較可能で,検証可能で,適時で,理解可能であれば補強される。」

概念フレームワークのこの文章はIFRS基準の骨格をつくる最も重要な文章と言ってもよい。概念フレームワークは全てのIFRS基準を作成する際に念頭に置かれるものであるので,基本的に全てのIFRSはこの考え方をベースに作られている。すなわち,最も大事な概念は,目的適合性と忠実な表現の二つである。では,ここで述べられている目的適合性と,忠実な表現というのは一体どういう事であろうか...