令和元年改正会社法の実務上の留意点 第2回 取締役関係

解説

西村あさひ法律事務所 弁護士 髙木 弘明

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はじめに

本連載では,会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号。以下「改正法」といい,改正法により改正された会社法を「改正会社法」という)による改正項目のうち,取締役の報酬等,会社補償及びD&O保険について,実務的に特に重要と思われる改正項目を取り上げる。

1 取締役の報酬等

(1) 取締役の報酬等の決定の方針

現行法上,指名委員会等設置会社以外の株式会社では,取締役の報酬等の額等を定款又は株主総会の決議によって定めることとされている( 会社法361条 1項)。その趣旨は,従来,株主の利益を害する形で高額の報酬が取締役に支払われるという,いわゆるお手盛りの弊害の防止にあると一般的に理解されてきた。しかし,近時は,取締役の報酬等は取締役が適切に職務を執行するインセンティブを付与するための重要な手段であることが認識され,コーポレートガバナンス・コードでも「中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ,健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである」とされている(原則4-2)

このように,取締役の報酬等を取締役が適...