Q&Aコーナー 気になる論点(260) IASBにおける財務諸表の表示の改正案(5)

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

‐通例でない収益・費用の開示‐
( 30頁)

 国際会計基準審議会(IASB)は,IAS第1号「財務諸表の表示」を置き換えるように,2019年12月17日に公開草案(ED)「全般的な表示及び開示」(IAS第1号改正案)を公表しています(コメント期限:2020年6月30日)。IAS第1号改正案では,通例でない(unusual)収益・費用を開示することを提案していましたが,IFRSでは,異常項目(extraordinary items)を区別表示することを禁止していたのではないでしょうか。

IAS第1号改正案では,通例でない収益・費用の注記を提案しています。当該提案は,その定義に加え,財務業績計算書上,通例の収益・費用と一緒に表示され,注記においてのみ開示される点で,異常項目を区分表示しないこととは異なるとしています。

<解説>

通例でない収益・費用(1)‐背景

IAS第1号改正案では,[図表1]のように,多くの企業が基礎利益や正常利益と呼ばれるような情報を提供するために,通例でない収益・費用を開示していますが,財務諸表利用者は,この情報を提供する方...