IFRSをめぐる動向 第122回 「引当金」プロジェクトの最近の動向

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 大澤美幸

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,「財務報告に関する概念フレームワーク」(以下,「概念フレームワーク」)の改訂を受けて議論が行われているIAS第37号「引当金,偶発負債及び偶発資産」(以下,「IAS第37号」)の諸側面を修正するプロジェクトに関する審議状況を紹介します。

本稿では2020年1月末までのIASBにおける議論の内容が含まれていますが,IASBの討議の状況によっては,今後この内容が変更される可能性がありますのでご留意ください。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.プロジェクトの背景及び経緯

(1)2002年~2010年

IASBは2002年に,IAS第37号の見直しに関するプロジェクトを開始しました。2005年6月には修正案を定めた公開草案を公表し,負債の認識要件から資源の流出が必要となる可能性が高い(蓋然性)という要件を削除する提案や,測定を期待値による方式に一本化する提案などが行われました。その後2010...