会計知識録 第1回 繰延税金資産の取り崩し

解説

 公認会計士 溝口 聖規

~企業の会計・財務活動を解読~
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決算期末が近づくと,繰延税金資産の取り崩しを公表する会社があります。これらの会社は,繰延税金資産の取り崩しの要因として今期および今後の業績見通し等の悪化を挙げています。繰延税金資産の取り崩しと会社の今期以降の業績はどう関係するのでしょうか?

今回は,繰延税金資産の取り崩しについて説明したいと思います。

繰延税金資産とは

繰延税金資産の取り崩しの仕組みを理解するには,税効果会計を理解する必要があります。税効果会計とは,『企業会計』と『税務会計』のズレを調整し,税金費用を適切に期間配分する手続きをいいます。企業会計,税務会計の目的が異なるため,それぞれの利益計算のルールが異なります。その結果,会計上の利益と税務上の利益(課税所得)は必ずしも一致しません。そのため,税務上の利益計算の結果算定された法人税等の税金費用を損益計算書(P/L)へ計上すると,税引前当期純利益(税前利益)と法人税等の税金費用の関係がいびつになることがあります。そのようないびつさを解消し,P/L上の税前利益と税金費用の関係を合理的に保つことが税効果会計の目的で...