実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」の概要

解説

企業会計基準委員会 アシスタント・ディレクター 片山 智二

( 10頁)

Ⅰ.はじめに

企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は,2020年3月31日に,実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表 した。本稿では,本実務対応報告の概要を紹介する。なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見であり,ASBJの見解を示すものではないことをあらかじめ申し添える。

Ⅱ.本実務対応報告公表の経緯

令和2年度税制改正において,従来の連結納税制度が見直され,グループ通算制度に移行する税制改正法(「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第8号))(以下「改正法人税法」という。)が2020年3月27日に成立している。グループ通算制度の適用は2022年4月1日以後開始する事業年度からであるが,グループ通算制度の適用対象となる企業は,改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)において,グループ通算制度の適用を前提として繰延税金資産の回収可能性の判断を行う必要がある。しかしながら...