会計知識録 第3回 EBOは将来の企業買収の主流になる?

解説

 公認会計士 溝口 聖規

~企業の会計・財務活動を解読~
( 24頁)

2020年4月3日に,不動産事業,ホテル事業を手掛けるユニゾホールディングス(ユニゾ)の従業員らによって設立されたチトセア投資(チトセア)による,ユニゾの買収が成立しました。従業員による企業買収をEBO(エンプロイー・バイアウト)といいますが,ユニゾの事例は,国内の上場会社としては初のEBOの事例となりました。

【図表1】ユニゾの事業の概況

(単位:億円)

2019年
3月期
不動産事業 ホテル事業 合計
売上高 430(77%) 130(23%) 560(100%)
営業利益 164(89%) 20(11%) 184(100%)
総資産 546(83%) 110(17%) 656(100%)
(*)ユニゾの有価証券報告書データより筆者が作成。合計は事業セグメントの数値の単純合計であり,同社の連結数値とは一致しません。

ユニゾのEBO

まず,ユニゾのEBOの経緯を確認しておきましょう。

事の発端は,エイチ・アイ・エス(HIS)によるTOBでした。HISは,ユニゾの株式の議決権比率を45%まで高めることで,ユニゾの上場を維持しつつも経営を実質的に支配することを狙いま...