時事談論 vol.72「また"時価"に翻弄されたいか?」

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●あの会社が主張した「時価」

米国のSOX法が制定されるきっかけとなったエンロン社の破綻。関連する映画やドラマを何作か見た。その中に,当時の経営者や役員,従業員本人が登場する,ドキュメントのような作品があった。トップ二人とCFOはこの世を去るか収監されていたため,破綻前のインタビューしかなかったが,それ以外の役員や従業員の破綻後の話もたくさん含まれていた。原作者であるジャーナリストやアナリスト,エンロン社に人生を狂わされた人...多数の外部者の話もあった。

途中CFOが,SPC(特別目的会社)を作り,そこに親会社が保有していた資産を売却することで利益を計上することを説明している場面がある。「価格など何とでもなるから,必ず儲かる」とも。また,彼らが"mark to market accounting"を採用したことは画期的なことだ,というくだりがある。「市場価格」「公正価値」色々な日本語表現はあるだろうが,自社の開発計画,将来の希望的観測,自らが描いたシナリオに基づき,保有資産の価値を好き放題に高く算定し,それを「時価」だと主張する。日本語字幕は「仮想将来会計」とあったが,英語では"hypoth...