<INTERVIEW>CFOが導く変革と成長

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 東京都立大学大学院特任教授/元・日本電産 取締役専務執行役員 最高財務責任者 吉松 加雄
慶応義塾大学大学院 客員教授 西川 郁生

<編集部より>
企業会計基準委員会の元委員長で,慶応義塾大学大学院客員教授を務める西川郁生氏によるCEO/CFOインタビューシリーズの最新回。2018年まで日本電産のCFOなど役員を10年務め,カリスマ経営者・永守重信氏の右腕として同社の成長を支えた吉松加雄氏を迎え,対談形式で話を聞いた。
健全経理の姿勢を学んだ三菱電機時代,日本電産の役員在任中の時価総額10倍につながる経営管理手腕,CFO機能を担う"人財"の育成術。豊富な経験に裏打ちされた視点から考える,新時代のCFOの仕事・役割とは何か。また,現下のコロナ危機にも話題が及んだ。「コロナ危機は変革と成長のチャンス――」。新型コロナウイルスという逆境の中,企業経営のかじ取りは困難に直面している。その中でCFOという存在がどのような解決策を示し,ピンチをチャンスに変えることができるか。ここにもCFOとしての使命がある。

1.健全経理の基礎を学ぶ

(1)不本意だった経理配属が財産に

西川  本日は,元・日本電産のCFOとして高名な吉松加雄さんから,「CFOの仕事」をテーマにお話を伺いたいと思います。吉松さんには日本電産にいらした時代からこのような場で読者に向けたお話をしていただきたいと思っており,やっと実現しました。

本誌では2017年の新年に,永守重信代表取締役社長(当時)から日本電産の財務戦略の根幹にある考えを伺いました( No.3293・14頁 )。永守さんを長年支えた吉松さんからは,CFOの実践に関わる話をお聞きしたいと思います。

吉松さんの原点は,最初に就職された三菱電機でのご経験にあるとお聞きしています。

吉松  1982年に三菱電機に入社し,当初は海外営業を希望していました。しかし,主力工場の神戸製作所に配属されたものの,部署は経理でした。大学時代はグローバル視点でマクロ経済を学んできたのに,いきなり1銭,2銭というミクロの世界で原価計算をする。大きな挫折感とともに職業人人生がスタートしました(笑)。

ただ,今となり振り返ってみますと,40年近くに及ぶ経理・財務の仕事の基礎を作ってくれたのが,5年間の神戸製作所勤務でした。管理会計を担当し,担当製造部の開発品の原価の見積もりや,受注した工事原価を算定して収...