時事談論 vol.78「KAMを育てよう」

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●小さく生まれたKAMを大きく育てよう

本誌3473号 にも既報の通り,本年3月決算企業の「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用は48件だった。今後,3月決算以外の会社が順次早期適用するかもしれないが,わが国の主要な会社の多くは3月決算なので,ここからその数字が大きく伸びることはないだろう。上場会社が3,500社以上ある中で,48件という数は,「少ない」というより,一部の会社が適用したに留まると言った方がいい。コロナ禍の影響もあったのだろう。開示はそれぞれの会社の問題だから,全体の件数が多い少ないと言っても意味がない。来年度の開示を期待したい。とはいえ,結果的にほとんどの会社が,来年度一斉にKAMの初度適用となってしまった。今回の早期適用を前例として取組みが進むのだろうが,大きな混乱が起きないかと心配だ。

さて,今「会社が適用」と書いたが,この表現に違和感をもつ方もいるだろう。KAMは監査報告書に記載されるもので,会社が開示するものではないからだ。しかし,ほとんどの場合,早期適用をするかしないかは,監査法人と会社側との協議によって決定される。実質的には会社側の意向によって決まっている...