INTERVIEW 2年目におけるKAM対応の実務について

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株式会社三菱ケミカルホールディングス 経営管理室 制度会計グループ グループマネージャー 持田 理

<編集部より> 2020年3月期の監査報告書において,KAM(Key Audit Matters:監査上の主要な検討事項)を早期適用した三菱ケミカルホールディングス(東一,化学,EY新日本)。同社は,2019年3月期に会社のWebサイトにて「KAMに相当する事項」を自主開示していた( No.3417・3頁No.3428・18頁 )。そのため,2020年3月期はKAM対応の実務としては2年目となった。本誌は,同社の経営管理室 制度会計グループ グループマネージャー 持田理氏に書面にてインタビューを実施。2年目の実務についてお話を伺った。

1.2年目のスケジュールについて

――2019年3月期の任意適用に続き,2年目のKAM実務となりました。2年目を迎えるにあたって,どのようなスケジュールで対応されたかをお聞かせください。

1年目の任意早期適用時の内容も踏まえて,期初の監査計画設定時から監査人,監査委員,執行の三者がKAMを意識していました。具体的には,第1四半期決算から監査人と監査委員,執行との議論において「KAM候補」を共有しました。

そのようなプロセスを踏まえて,2020年2月ごろには一旦,三者間で案件(記載事項)及び大まかな文面(記載内容)についてもすり合わせが完了しました。

――そのころから,新型コロナウイルス感染症が拡大しましたが,その点はいかがでしたか。

期末時点にかけて新型コロナウイルス感染症が拡大し,その影響度への懸念が大きく高まったこともあり,記載事項や記載内容について再度検討を行いました。結果として記載事項はすり合わせ時と同じでしたが,記載内容についてはコロナ禍への対応を踏まえて見直しを行いました。

2.1年目との比較について

――1年目(2019年3月期)と比べてスムーズだった点はどのようなことでしょうか,2年目ならではの工夫などがございましたらお聞かせください。

1年目の任意早期適用時に開示形式を固めたことから,記載事項に関する議論からスタートすることが出来ました。

また,1年目の経験により監査人と監査委員・執行側の間で記載事項選定の考え方についてある程度「共通認識」が醸成されており,スムーズに進めることが出来ました。

――「2年目ならでは」の苦労点のようなものはありまし...