会計不正の構造【file21】外注先を巻き込んだ不正

  

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・タイプ(不正の種類):外注先との不適切な依存関係を作り出し,費用計上の先送り,仮装取引および売上回収現金の着服が行われた。

・業種・業態:業務機器の製造・販売

・手法・手口:販売子会社の複数の営業担当者が,外注先(業務機器の設置業務の委託先)との間で費用負担の付け替えを行い,一部売上代金を着服した。

今回は,外食関係業務機器の製造・販売を営む会社の販売子会社で発生した,外注費の先送り計上等による不正事例をとりあげる。

営業成績を過度に重視した組織風土のなか,複数の営業担当者により慣習として発生した不正である。過年度遡及修正を要する金額規模ではなかったが,過度のノルマを課し,外注費の付け替え(結果として外注費の先送り計上)を容認した経営管理者にも,責任の一端があろう。

1.会計不正の概要

(1)会社の状況

会社(甲社)グループは,国内外で数十の地域に販売子会社を擁し,外食店舗向けに厨房機器などを販売している。重要な経営指標として売上高営業利益率を掲げ,原価低減,経費削減を推進し,高利益体質を目指している。

(2)不正の手口・動機

① 販売子会社の1つである乙社において,業務機器の外食店舗への搬入および設...