IFRSをめぐる動向 第127回 顧客への子会社の売却

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 池亀 寛

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,IASBで検討されたIFRS基準の狭い範囲の修正の可能性について議論された,顧客への子会社の売却について説明します。IASBは,不動産を保有する子会社の顧客への売却のいくつかの類型に,IFRS第10号「連結財務諸表」ではなくIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を適用することを企業に要求するか否かについて,最終的にIASBの作業計画に追加しないことを決定しました。

以下では,IASB会議とIFRS解釈指針委員会の会議においてこれまで行われた議論の概要についてご紹介します。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.「顧客への子会社の売却」に関する議論の背景

IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)は,企業が通常の活動の一部として,子会社に対する資本持分を売却することによって不動産を販売するという顧客との契約を締結する取引の会計処理に際して,子会社に対する資本持分の売却としてIFRS...