Q&Aコーナー 気になる論点(274) 株式報酬における権利不確定の失効等

‐実務対応報告公開草案第60号②‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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2020年9月11日に公表された実務対応報告公開草案第60号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」(コメント期限は2020年11月11日)では,没収(事前交付型において,権利確定条件が達成されなかったことにより,企業が無償で株式を取得することが確定すること)により,過年度に計上した費用を戻し入れる場合は,対応する金額をその他資本剰余金から減額することを提案しています。これは,なぜでしょうか。

それは,当該取引の費用の認識や測定については企業会計基準第8号「 ストック・オプション等に関する会計基準 」の定めに準じるためとしています。

<解説>

事後交付型の会計処理の概要

実務対応報告公開草案第60号では,適用範囲である取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は,報酬として付与し,インセンティブ効果による追加的なサービスの提供を期待すること,企業の株価に応じて取締役等にとっての経済的価値が変動することは同様であるため,費用の認識や測定については企業会計基準第8号の定めに準じることを提案しています(36項‐37項)。

この基本的な考え方を踏まえ,事後交付型(4項(8))の...