不正事例に学ぶ子会社のリスク管理のポイント 第9回 財務分析のポイント~異常点の把握

有限責任 あずさ監査法人 リスクマネジメント部 パートナー 細井 友美子

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1.財務諸表の異常点を把握する方法

親会社では,子会社の財務諸表について,主に予算達成度合いの見極めや業績評価のために管理会計の視点で売上高や利益の状況を分析していると思われますが,事業上の課題や不正の兆候を把握するために財務会計の視点で異常点の有無を分析しているでしょうか?

経営目的や管理会計の視点からは,売上高・営業利益など損益項目・損益計算書だけに着目しがちですが,損益計算書と貸借対照表やキャッシュフロー計算書との関係を分析すると,損益項目だけではわからない異常点が浮き彫りになります。また,前期比較だけではなく,子会社の業績推移を俯瞰する5期比較分析,事業内容を踏まえた同業他社比較分析を行うことも有用です。

小規模な子会社において,親会社の目が行き届かないが故に不正が行われていても長期間気付くことができず,結果的に多額の不正が発覚するケースが見られます。どのような視点でどのように分析を行えば子会社の財務諸表における異常点をいち早くキャッチできるかを考えてみましょう。

2.貸借対照表にも着目①~債権の回転期間

A社の5期の業績推移を見ると,年々売上が増加しているので,順調に成長し期待通りの成...