新春特別寄稿 上場制度を巡る2020年の回顧と2021年の展望

株式会社東京証券取引所 上場部長 林 謙太郎

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1.はじめに

2020年は,新型コロナウイルス感染症の急速な拡大によって,人々の生活様式や経済活動の在り方に大きな制約が生じ,それに伴う変革が経済社会にもたらされた1年となった。年末にかけて30年ぶりに日経平均株価が2万7千円台を回復するなど,年央から株式市場はコロナ後を織り込んで堅調となったものの,足元では,引き続き新型コロナウイルス感染症の影響が上場会社の事業活動や経営成績に陰を落としている。

こうした状況を踏まえつつ,株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)では,上場会社各社の多大な協力を得て,投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす会社情報の適時かつ適切な開示の推進などを通じ,市場機能の維持に努めてきたところであるが,そうした中で,昨年10月1日に生じたシステム障害により,終日売買停止の事態を惹起したことは痛恨の極みである。今後は,市場に対する信頼の回復に向けて,必要な再発防止策の徹底に加え,日中の取引再開ルールの整備などにグループ全体で取り組んでまいりたい。

また,新型コロナウイルス感染症への対応と並行して,東証では,2019年12月に金融審議会市場ワーキング・グループ「市場構造...