IFRSをめぐる動向 第130回《特別編》 2020年の主な基準開発の動向と今後の予定
PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 林 千雄
PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 吉岡 亨
Ⅰ はじめに
昨年2020年は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により大変な1年になりました。3月以降,国際財務報告基準(IFRS)の設定主体である国際会計基準審議会(IASB)の会議もリモート形式で行われるなど,IFRSをめぐる活動には一定の制限がありましたが,そうした中でもコロナ禍での対応,新基準の開発,意見募集文書の公表などさまざまな動きがあった年といえます。
コロナ禍での対応としては,金融商品(IFRS第9号),リース(IFRS第16号)に関連した教育文書の公表および基準の修正といった緊急的な対応が行われました。また,新基準としては,昨年6月に,最後の大型基準とも言われていた保険契約(IFRS第17号)がついに最終化されました。また,8月には,金利指標改革に対応した救済措置を設けるための基準の修正も最終化されました。
さらに,多くの関心が寄せられているのれんと減損のトピックについては,3月にディスカッション・ペーパーが公表され,多くのコメントが寄せられています。また,11月には,現行の企業結合(IFRS第3号)では適用対象外とされている共通支配下の企業結合に関す...
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