不正事例に学ぶ子会社のリスク管理のポイント 第13回(最終回) AI・デジタル×監査

有限責任 あずさ監査法人 Digital Innovation部 テクニカルディレクター 宇宿 哲平

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1.AI・デジタルへの期待と現状

コロナ禍における,リモートワークの進展や海外渡航制限によって,これまでの子会社管理の手法が適用できないケースもあり,AIを含むデジタル技術の必要性は更に高まっています。

株式会社 KPMG FASが上場会社を対象として実施した調査においても,不正の防止・発見のためAIが「有効」と回答した企業は約半数を占めました。一方で,その「有効性は不明」と回答した企業も約4割となっており,不正対策としてAIを活用している企業は2%に止まっています。

本連載最終回である今回は,AIおよびデジタル技術を活用した子会社管理を行う際の考え方・留意点について説明します。

2.これまでの子会社管理

子会社管理において,規模の大きな子会社だけを検討の対象とするケースや,前期や予算との比較はするものの,どのような点に注目して,どのような対応をするかについて「経験と勘」に頼っているケースは多くあります。「経験と勘」を活用するということ自体は悪いことではなく,実際この「経験や勘」が威力を発揮して,不正を発見するということもあります。一方,この「経験と勘」には弱点があります。それは,暗黙知ゆえ,そ...