【投資家が求める開示】企業分析の視点からみたIFRS財務諸表 第8回 サステナビリティ・レポーティング,非財務開示はどこへ?

~新たな統合への長い旅路~

野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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筆者らは投資家等情報利用者を中心に自主的に集まり,IFRS財務諸表の課題について議論するワークショップを年3~4回開催している。このワークショップは,特定の資格や特定の業種に属するメンバーだけの集まりではないという点と,会計基準ではなくむしろ開示の問題を議論するという点が特徴となっている。毎回のテーマは参加者の希望により決めている。最近のテーマはIFRSに直接関連するものにとどまらず,国際的に注目されている開示の論点や動向,今後を見据えた内容へと広がりを見せている。

2020年9月,IFRS財団は「サステナビリティ・レポーティング」というタイトルでコンサルテーションを発表した。IFRS財団という会計基準を作成する団体が,非財務開示の基準作成に乗り出そうということだ。その少し前に我々は非財務の開示フレーム基準の一つを策定しているSASB(Sustainability Accounting Standards Board)からワークショップの誘いをうけた。いまやESG情報は投資において必須になってきており,詳しく知りディスカッションができる機会はありがたかった。しかし,この検討を始めてから開...