時事談論 vol.93「ERP導入による未来志向的な課題」

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●コロナ禍対応以前の経営課題

コロナ禍において感染症拡大を防止する観点から人と人との接触が制限される中で,事業活動を継続するための課題解決に向けた対応が試行されている。しかし,これらの多くはコロナ禍対応における固有の問題ではなく,従来から存在していた問題点が改めてクローズアップされている部分が大きい。

その一つに,新たな会計基準である収益認識基準への準備を進める際に多くの企業が認識したが,本業に係るメインストリームの収益計上プロセスに対して,相当数のサブプロセスが存在することである。日本企業の強さに貢献していると考えたい「おもてなし」であるが,内部統制システムを合理的に運用する観点からは必ずしも是認できない課題が発現している。改めて見直しを行うと行き過ぎとも考えられる顧客至上主義に根差す顧客サービスによって,お得意様向けのサブプロセスが相当数,メインプロセスと併存しており,追加的な管理工数を要している。すでに一部では見直しが始まっているが,顧客を喪失するのではないかとの恐怖心との闘いでもある。

次に,全社ベースまたは企業グループ全体でのデータの標準化・一元化の課題である。人と人との接触機会を...