時事談論 vol.95「品質管理基準の改訂とscalability」

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●品質管理基準の改訂

2021年2月4日,金融庁企業会計審議会監査部会が開催された。今後の審議のテーマは,品質管理基準の改訂だという。国際基準の改訂を受けて,わが国でも対応する基準の改訂が必要となったのである。

公表されている資料によれば,国際基準では,まず,監査事務所の規模に応じた柔軟性に乏しいという批判があった従来の品質管理基準に代えて,積極的な品質マネジメントを奨励する国際品質マネジメント基準1号(ISQM1)が新設された。そこでは,監査事務所の品質管理システムを強化するために,監査事務所に求められる品質管理システムの構成要素の見直しが図られた。新たに,「監査事務所のリスク評価プロセス」や「情報とコミュニケーション」が設けられ,それぞれより具体的に規定された項目について品質目標を設定することが要求される。監査事務所は,品質目標の達成を阻害する品質リスクを識別・評価し,当該リスクに対応する方針・手続を定め,運用し,不備があれば根本原因分析に基づき改善することとなる。

また,新たに設定された国際品質マネジメント基準2号(ISQM2)では,審査担当者の適格性について,業務執行責任者として関与...