2021年3月期IFRS決算Q&A 第2回 アジェンダ決定とIFRS財団の教育的資料

有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 石原 宏司

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Ⅰ.はじめに

本稿では,IFRS基準ではないものの,IFRS適用企業の決算に影響する可能性があるIFRS解釈指針委員会(以下,「解釈指針委員会」)が公表するアジェンダ決定及びIFRS財団が公表する教育的資料について説明します。文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であり,筆者の所属する法人の見解ではないことをあらかじめお断りします。

Ⅱ.アジェンダ決定

Q1 解釈指針委員会が公表する「アジェンダ決定」とはどのようなものでしょうか。

解釈指針委員会では,関係者からよせられるIFRSの解釈や会計処理に不統一がある論点につき議論を行います。議論の結果,現行基準が会計処理を決定する十分な基礎を提供していない場合,IASBにIFRSの修正を提案することや,IFRIC解釈指針の開発を行います。これに対し,現行の基準が適切な基礎を提供していると判断したものは,その論点に対して基準をどのように適用するのかを説明する説明的資料を含む,「基準設定プロジェクトを作業計画に追加しない決定」(以下,「アジェンダ決定」)を,4名以上のIASB理事の反対のないことを条件に,IASBのウェブサイトに掲載されるIFRIC Upd...