Q&Aコーナー 気になる論点(296) 外貨換算に関するIASBの議論(2)

‐為替レートの欠如に関する公開草案‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は,2021年4月に,公開草案「交換可能性の欠如」を公表し,コメント期限を2021年9月1日としていました。企業会計基準委員会(ASBJ)では,どのようにコメントしたのでしょうか。

ASBJは,公開草案に対するコメント・レターは提出しないこととしています。2021年8月30日開催の第464回企業会計基準委員会の報告事項(1)では,関係し得るわが国のIFRS任意適用企業に対するアウトリーチにおいて,重要性は乏しく,公開草案に反対はしないとの回答があったことを踏まえ,わが国の企業に与える影響は少ないとしています。

<解説>

公開草案(1)‐背景

IAS第21号「外国為替レート変動の影響」では,直物為替レート(spot exchange rate)を,即時の受渡しに係る為替レートと定義し(8項),例えば,以下のような場合に,直物為替レートを使用することとしています。

(1) 外貨建取引は,当初認識時において取引日現在の直物為替レートを用いて,機能通貨で記録する(21項)。

(2) 外貨建貨幣性項目は,期末日において決算日レートを用いて機能通貨に換算する(23項(a))...