決算に際して気に留めておきたい 配当,欠損填補などの会社法に関する会計論点

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 吉田 剛

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はじめに

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し,業績への影響も,会社によっては重要なものとなっているのではないかと思われます。もちろん,コロナ禍の収束をどのように見込んで決算における会計上の見積りに織り込むか,という損益に直接的に影響するような論点もあります。しかしながら,それ以外にも考慮しておくべきことがさまざまあるのではないかと考えられます。

本稿では,決算において影響が生じ得る「会社法」に関連する会計上の論点について,Q&A形式で解説していきます。平時であればさほど気にする必要がなかったかもしれない分配可能額(いわゆる配当可能利益)の計算や,コロナ禍で業績が悪化した結果として生じた欠損を填補する際の留意事項などについて,なるべく分かりやすく,数字や図表も交えてまとめていきたいと思います。

なお,文中意見に係る部分は筆者の私見である旨,予めお伝えしておきます。

Q1 分配可能額の計算

会社が配当を行う際の限度となる額の算定方法が会社法において決められているそうですが,その具体的なルールについて教えてください。

A1

会社法及び会社計算規則において,配当に際しての限度額となる「分配可能額」の算...