会計知識録 第18回 親子間の決算日のズレがもたらす影響

グロービス経営大学院大学教員 公認会計士 溝口 聖規

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2021年3月31日,三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下にある三菱UFJ証券ホールディングス(MUFG証券)は,欧州子会社(MUFG Securities EMEA plc)とその顧客であるアメリカ企業との取引において発生が見込まれる損害額が約2.7億ドル(約300億円)になると発表しました。同社によれば,当該損失は当該欧州子会社の決算に反映され,MUFG証券では,2022年3月期の第1四半期(2021年4月~6月)の連結決算に反映される予定とのことでした。

MUFG証券は3月決算会社です。MUFG証券の決算日(2021年3月31日)までに実質的に確定した子会社の損失が,2021年3月期の連結決算に反映されないのを不思議に感じる人もいるのではないでしょうか。

親子間の決算日に関する会計ルール

日本の連結決算に関する会計ルールでは,原則的に連結グループの決算日を統一することを求めているものの,親子間の決算日の差異が3カ月以内の場合は子会社の決算をベースに連結決算を行うことが可能です(連結財務諸表に関する会計基準16項及び(注4))。MUFG証券と欧州子会社の決算期は,それぞれ3月,12月...