IFRSをめぐる動向 第135回 IFRS第10号「連結財務諸表」等の適用後レビューの検討状況

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 吉岡 亨

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1 はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,IASBにおけるIFRS第10号「連結財務諸表」等の適用後レビューの検討状況について,2021年7月のIASB会議で紹介された情報要請へのフィードバックの概要と主な討議の内容を取り上げます。なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

2 背景

2020年12月,IASBは情報要請「IFRS第10号『連結財務諸表』,IFRS第11号『共同支配の取決め』及びIFRS第12号『他の企業への関与の開示』の適用後レビュー」を公表しました(コメント期限は2021年5月10日に終了)。

この適用後レビューは,2019年9月にIASBのアジェンダに追加され,検討が開始されました。適用後レビューは,新基準や大規模な基準の修正が意図した通りに機能しているかの評価を目的にIASBによって実施されるレビューです。基準の開発時に重要であったか,議論の多かった論点について,主に以下の観点から検討が行われます。

・ 利用者の意思決定...