米田惠美さん「想いを語り,リーダーシップを」

ZEIKEN BRIDGE 2021で講演
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税務研究会によるオンラインセミナーイベント「ZEIKEN BRIDGE 2021」(開催中)。12月15日には,公認会計士で元Jリーグ理事の米田惠美さんの講演が配信された。「これからの時代に求められる会計・財務人材とは」をテーマに,自身の経験を踏まえて経営視点を持つヒントを語っている。

組織改革と社会連携に尽力

講演した米田さん

米田さんがJリーグの理事に就任した2018年頃は,「組織がどこに向かっているのかの認識がバラバラで,人事評価に対する不満も大きかった」という。数字や人の話に基づき,組織に歪みがないか確認しながら経営改革を進めた。その一方で,多数のホームタウン活動を手掛けるJリーグの特性を生かし,社会課題に対して地域と連携して取り組む活動,通称「シャレン!」を立ち上げる。当事者を増やすことで,地域共創の輪を広げていった。「行政・企業・個人の強みを生かして共通のゴールを作り,スポーツの力で価値を生み出す。CSV(共通価値の創造)は社会貢献のみならず経営的にも意味がある」と米田さん。非財務価値の向上を財務価値につなげる。今のビジネス界でも鍵になるトピックだ。

LOVE & CRAZYで挑戦続ける

自身のキャリアを「壁にぶつかる都度,それを『問い』に変え,現場に身を投じる実験人生だった」と振り返った米田さん。監査法人時代には粉飾や不正にも遭遇し,会計や戦略だけでは足りない,「人」にアプローチしなければ根本的な解決は難しいと感じた。独立後は人材開発・組織開発のコンサルのかたわら在宅診療所の設立など,医療制度の構造的課題や人の生死・内面とも向き合った。「専門外の領域にも学びがあるし,より会計スキルの強みを理解できるようになった」。当事者意識を持って目の前の問題を見つめてきた経験がJリーグ改革につながった。

経営視点を持った人材になるために重要なことは「リーダーとして責任を負う経験」,さらに「想いを語ること」だという。「語ることで徐々に共感者が増えてくる。アンチも増えるかもしれないが,逆境の分だけ人の弱みにも共感できるようになる」と強調した。

『LOVE & CRAZY』。挑戦し続けることにためらいを感じた時,米田さんはこの言葉で自分を勇気づけるという。クレイジーでも,はみ出してもいいじゃない。だけど愛情を持つことも大切に――。「もし皆さんが壁にぶつかったら,私の七転八倒話や『LOVE &CRAZY』を思い出してください」と笑顔で締めくくった。

イベントの動画は1月31日まで視聴できる。申し込みは税務研究会のホームページから。または「ZEIKEN BRIDGE 2021」で検索を。