ESGと経営財務 第6回 ESG経営に取り組む企業の事例

―オムロンとBUSINESS-ALLIANCE社―

元オムロン株式会社 執行役員・グローバル理財本部長/京都大学経営管理大学院 研究員 大上 高充
BUSINESS-ALLIANCE株式会社 代表取締役 藤田 健太郎
京都大学経営管理大学院・経済学部 教授 砂川 伸幸

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今回は、ESG経営を推進する先駆的な企業であるオムロン株式会社(以下、オムロン)とESG経営のサポートを行うBUSINESS-ALLIANCE株式会社(以下、BA社)の取組みを紹介する。

オムロンは、本連載の第1回( No.3574・12頁 )で紹介した東京証券取引所の企業価値向上表彰の大賞に選出されており、有名なROIC逆ツリーの導入と浸透によって、財務的な企業価値を高めてきた企業である。また、同社はいち早くESGや人材投資を含む無形資産の活用に取り組んでおり、GPIFが2022年に公表した国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」や東洋経済の2022年版「SDGs企業」ランキングの第一位に選出されている。

BA社は、データ分析に基づくマネジメントシステムの提供によって、企業のESG経営をサポートするベンチャー企業である。ESG関連データと財務データを分析し、それを経営に活用するためには、データの収集と分析を行いPDCAのサイクルに組み込む必要がある。多くの企業が抱えているこの課題は、いまや社会的な課題と言っても良いかもしれない。

1.オムロンのESG経営

オムロンは1933年に立石電機製作所と...