財務諸表における重要トピックスの開示:傾向と開示例(前編) ロシア・ウクライナ情勢

 公認会計士 山田 善隆

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Ⅰ.はじめに

企業環境の不確実性が高まるなかで、企業が企業環境の変化にどのように対応しているかについての関心が高まっている。

有価証券報告書において、一般にこのような情報は「事業の状況」等の箇所において記載される。

しかし、多くの場合、これらの帰結は最終的に財政状態または経営成績への影響を通じて財務諸表に反映される。また、資産または負債の測定にあたって会計上の見積りを伴う場合には、将来の状況等に関する経営者の仮定が現在の資産及び負債の測定額に反映される。

したがって、財務諸表においても、これらの企業環境の変化や不確実性とそれらに対する経営者の対応が企業の財政状態や経営成績に及ぼした影響(あるいは及ぼしうる影響)を理解できるような情報開示の有用性がますます高まっている。

本稿では、上述のような問題意識の下、最近の重要な企業環境の変化の例である①ロシア・ウクライナ情勢と②気候変動をそれぞれ前編と後編に分けてとりあげ、財務諸表の開示内容からこれらの事象が財務諸表に及ぼした影響をどの程度読み取れるか、全般的な傾向と参考となる開示例を紹介しながら検討したい。

なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見である...