財務諸表における重要トピックスの開示:傾向と開示例(後編) 気候変動の影響

 公認会計士 山田 善隆

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Ⅰ.はじめに

本稿においては、企業環境の変化とそれらに対する経営者の対応が財務諸表に及ぼした影響を財務諸表の開示からどの程度読み取れるかについて、全般的な傾向と参考となる開示例を紹介しながら検討する。前回のロシア・ウクライナ情勢に引き続き、今回は気候変動の影響について検討する。

なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

Ⅱ.気候変動に関する開示

(1)事象の性質

気候変動問題はいまや地球規模の重要課題となっており、各セクターにおいて温室効果ガスの排出削減等に取り組むことが急務となっている。このようななかで、脱炭素社会に向けて企業環境の大きな変化が予想されるほか、企業セクターに対しては温室効果ガスの排出削減等の期待も大きく、企業にとっての新たな機会とリスクが生じている。

このように気候変動の影響が企業価値に重要な影響を及ぼす可能性が高まっていることから、気候変動関連の情報開示に対する投資家等のニーズも高まっている。

欧米や日本をはじめとする主要国では気候変動または気候変動を含むサステナビリティ情報開示の制度化(または制度強化)の議論がすすんでいる。また、IFRS財団...