ESGと経営財務 第7回(最終回) ESG経営とサステナビリティに取り組む企業

―シスメックスと日立製作所―

シスメックス株式会社 コーポレートコミュニケーション本部長 京都大学経営管理大学院 客員教授 岡田 紀子
株式会社日立製作所 サステナビリティ推進本部主管 一般社団法人ESG情報開示研究会 共同代表理事/京都大学経営管理大学院 特命教授 増田 典生
京都大学経営管理大学院・経済学部 教授 砂川 伸幸

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「ESGと経営財務」の最終回にふさわしい二つの企業のESGとサステナビリティへの取組みを紹介する。シスメックス株式会社(以下、シスメックス)と株式会社日立製作所(以下、日立製作所または日立)である。

1.シスメックスのサステナビリティ経営

シスメックスは、グループ企業理念「Sysmex Way」において「ヘルスケアの進化をデザインする。」というミッションを掲げ、世界190の国と地域に血液検査に必要な機器と試薬を供給し、約80億人の健康を支えている。Sysmex Wayは、企業と従業員が社会に貢献し、成長し続けるためのミッション、バリュー、マインドと行動基準で構成されている。約1万人の従業員の指針となる行動基準では、多様なステークホルダー(顧客、従業員、取引先、株主、社会)に安心をお届けすることを約束している。

以下では、株主・投資家に焦点をあて、企業と投資家との建設的な対話(エンゲージメント)を重視したサステナビリティ経営の取組みについて紹介する。

(1)投資家とのエンゲージメント

企業と投資家は、企業価値向上という目的が一致しており、対話を通じてWin-Winの関係を構築することが可能である①...