IFRSをめぐる動向 第148回 負の低排出車クレジット(IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」)に関するアジェンダ決定

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 伊藤清治

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1.はじめに

本連載は、主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき、IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は、IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)で検討された、2022年6月の「負の低排出車クレジット」に関するアジェンダ決定について説明します。

IFRS ICは、関係者から寄せられた実務上の問題に関する要望書について検討を行い、基準開発のアジェンダに追加すべきか否かの評価を行っています。これは、企業によるIFRS会計基準の適用をサポートする活動の一環として行われているものです。この評価の過程で、寄せられた要望書に関する論点を基準設定プロジェクトに追加しないことを決定することがあります。このような決定は、IFRS会計基準の適用に関するIFRS ICの見解とともに、「アジェンダ決定」として一般に公表されます。「アジェンダ決定」自体に規範性はないものの、IFRS会計基準の諸原則および要求事項が、特定の取引または事実パターンに対してどのように適用されるかを説明している場合があり、IFRS会計基準の適用においては有用なものです。

以下では、「負の...