<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第75回 保険とIFRS会計基準(1)
国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継
IFRS第17号の衝撃
新しく始まった2023年はどんな年になるかと聞かれて、IFRS第17号「保険契約」の適用が開始される年ですと答える人は、おそらく保険業界の人しかいないであろう。ただ、日本の保険業界の方でも、IFRS第17号の適用を意識している人は極めて少ないと思われる。それほど、日本の市場関係者はIFRSの保険会計について関心がない。
しかしこのIFRS第17号は、これまでの保険の会計の概念をすっかり変えてしまうものであり、そのインパクトはこれまでの他のどの会計基準よりも大きいのではないかと思われる。その理由は、これまで保険契約に関する会計基準がなかったからである。各法域に於いて「保険会社の会計基準」は存在しているが、それらは一般の投資家向けの会計基準ではなく、各法域の規制当局による規制のための特別な会計である。したがって、それらは法域によって異なり、しかも、通常の企業の会計基準とは大きく異なる。このようなことから、保険会社と一般企業を比較することはほとんどできなかった。保険会社は特別な会社であり、一般企業と比較することなど意味がないと考えられてきた。
ところが、IFRS会計基準では...
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