EUにおけるCSRDの適用について

~日本企業への影響など~

有限責任 あずさ監査法人 開示高度化推進部長 関口 智和

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1.はじめに

最近、サステナビリティ報告をめぐって国内外で様々な動向がある。特に欧州では、2022年末に、欧州委員会(European Commission、以下「EC」という。)が欧州議会(European Parliament )やEU理事会(The Council of the EU )との協議のうえ、企業によるサステナビリティ報告に関する指令(Corporate Sustainability Reporting Directive、以下「CSRD」という。)を最終化しており、これがEUの官報(Official Journal)に掲載されている。

CSRDは、企業によるサステナビリティ報告について定めたものであるが、これには適用対象、報告すべき事項、準拠すべき報告基準、保証業務に係る事項等、広範囲な内容が含まれている。EUの法令体系では、指令(Directive)における定めが実際に要求されるには各国における国内法制化の手続を含め、幾つかのプロセスは残されているが、その影響は明らかになりつつある。特に、CSRDで要求されている事項は、日本企業のEU域内の現地法人だけでなく、日本企業グ...