<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第81回 保険とIFRS会計基準(7)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

( 26頁)

エルサレムの悲劇

中東情勢が比較的落ち着いていた1990年代の初頭に旅行でエルサレム旧市街を訪れたことがある。滞在した訳ではなく、観光目的で廻っただけなので、エルサレムについて何かわかった訳ではないのだが、宗教によって分断された都市の複雑な緊張感は伝わった。

エルサレム旧市街はユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地である。旧市街は東西南北の4つに分割され、上記の3つにキリスト教の一派であるアルメニア正教を加えた4つの異なる宗教の信者がそれぞれの居住区を構成している。観光ツアーでは居住区を越えることができたが、ライフルをかまえた警備員に睨まれながら境界を通過するのは非常にこわかったことを憶えている。

ユダヤ教、イスラム教、キリスト教がいずれもエルサレムを聖地としているのは、この3つの宗教がいずれも預言者アブラハムという共通のルーツを持っているからである。しかし、それぞれの宗教での教えは全く異なる発達を遂げてしまったので、今日の中東情勢があり、多くの悲劇の源となっている。

宗教と金融

宗教においては、それぞれ独特のきまりのようなものがある。その中で経済発展に大きな影響を及ぼすのが利子や保険など金融に...