Q&Aコーナー 気になる論点(335) FASBによる暗号資産の会計処理案

‐公正価値の測定差額を当期純利益へ‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 米国財務会計基準審議会(FASB)は、2023年3月23日に会計基準更新書(ASU)案「無形資産‐のれん及びその他‐暗号資産(サブトピック350-60):暗号資産の会計処理と開示」(コメント期限:2023年6月6日)を公表しています。このASU案は、暗号資産の会計処理について、国際会計基準(IFRS)とは異なる提案をしているのでしょうか。

はい。FASBのASU案では、適用範囲となる暗号資産を公正価値で測定し、その変動から生じる利得・損失を当期純利益とすることを提案しています。IFRSとは、適用範囲、公正価値測定の適用(強制か選択か)、活発な市場の必要性、公正価値測定差額の処理において、相違があるとしています。

〈解説〉

FASBのASU案(1)‐経緯

FASBでは、2021年6月にコメント募集(ITC)「アジェンダ協議」を公表し、財務報告の新興分野についても幅広い関係者のフィードバックを求めました。2021年12月に、このプロジェクトを研究アジェンダに追加し、2022年5月には、その調査結果に基づき、「デジタル資産の会計処理と開示」をテクニカルアジェンダに追加しました①。2022年6月...